ゴム動力 プラ子の日記  〜 第139回め 〜

    

3月18日(土)   春

1号2号それぞれの卒業式が終わってしまった。

2号とは対照的に、1号は割と無口だ。学校の話を聞いても特に何も言わない。名前だけはなんとか聞き出した「割と仲がいい」友人たちの顔を初めてみた。1号とは対照的によくしゃべる子たちだった。ひょうきんに胸のコサージュを耳に飾ってふざけていたその様子を遠巻きに女の子たちが見てる。最近は「ボタンください」とか、言わないのかなぁ・・・と、人ごとながら私までソワソワする。

私の時・・・

よく覚えているのは、卒業生を送るときのことだ。私は陸上部のM先輩の第二ボタンを密かに狙っていた。でも、やっぱり先輩は取り巻かれていた。とても言い出せるような状況じゃなかった。

そしたら、友人のK子ちゃんが、「私がもらってきてあげる!」と走りだした。そして先輩の取り巻きをかき分け、いきなり第二ボタンに手をかけると、ブチッとむしり取ってしまったのだ! 一同唖然。時間が止まった。地球の自転もその場で10秒止まったはずだ。間違いない。

 覚えているのはそこまで。 その後どう逃げたとか、ボタンをどうしたとか、一切覚えていない。

そうか、あれからもう30年近く経ったのか・・・K子ちゃんはどうしているかな。 

卒業生の合唱は、これでもかと何曲もメドレーで泣ける曲を披露してくれた。歳がわかるといわれるよなぁ〜「贈る言葉」で反射的にウルウルしちゃうところあたり。「卒業写真」は私のカラオケの定番でもあり、思わず口ずさんだり。


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田んぼの中の帰り道、春は霞がちな富士山が雲一つ無い青空の中にくっきり見えていた。そんな日は風が強いことが多いのだけど、静岡は暖かく柔らかな春風。

私は何かと話をしたいのに、1号は一本道を先にどんどん歩いて行ってしまって、遠くで振り向いて、そして見えなくなってしまった。

なんだかこれからの人生を見るようだった。

住宅地に入ると、沈丁花が香っていた。この香りには立ち止まらずにいられない。 新入学前の不安と期待に胸がドキドキする、そのときに香っていたのはいつも沈丁花だった。

「贈る言葉」でウルウル、「沈丁花」でタイムスリップ。 そして、「暖かい風」にはフッと・・・

    セオリー通りの春だ。

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