ゴム動力 プラ子の日記  〜 第78回め〜  

 

平成17年 4月26日 (火曜日)

ランチ難民とはこういうことか。都会だなぁ。

4月22日、モリナガ先生との打ち合わせを終え、ランチをご一緒することに。ところがどこもいっぱいだ。それで、食後と思っていたけれど予定変更、先に神田神保町の三省堂ビル8Fにある「オリオンモデルズ」さんに行くことにした。




なんと美しい・・・エッチングパーツいっぱい♪



「お買いあげありがとうございました!」と、やらせ撮影。(笑)
下げたまま動かぬ店員さんの頭にモリナガ先生大笑い。
「こんなときに迷宮物語が品切れだなんて・・・サインいただきたかった・・・」店員さん談



店内には細かなパーツがいっぱいで見てるだけでワクワク。最近の私の「光り物」とは、「アクセサリー」ではなくて「エッチングパーツ」になりつつあるらしい。すごい品揃えに心がときめく。他にも何があるかしらと、店内を見て回ると、本物のキャタピラの1片(って数えるの?)が、床に置いてあった。

大きくてごっつくて錆びていて、1片でも迫力がある。こ〜んなに重いものがいくつも繋がって、その上に頑丈な鉄の車体があって、弾薬が満載で、人も乗るわけでしょ。そんな巨大なものが目の前の凸凹道を通り過ぎていく迫力たるや、どんなもんかと想像すると、きしむ鉄の音が聞こえてくるようで耳を塞いでのけぞっちゃうよ。ましてや、砲身が自分に向かって、グィィィィ〜〜ンと回ってピタリと止まったりしたら、一歩も動けないでおしっこもらしちゃうよなぁ。 (失礼・・・ぺこり)

そんなことを考えていたら、心の奥の方からなんかちょっと痛いような懐かしい記憶がよみがえってきた。・・・そうなんだ、そんな砲身みたいな視線を私に向ける人がいたのだった・・・。

私は目が合わないようにいつも先にその人を見つける努力をしながら近所のスーパーに買い物に行ったものだ。「私に何かあったら、犯人はあの人よ」などと親に言ったりして。もう20年ぐらい前のことなんだけどね。とにかく怖くて怯えていたんだ。

その人は体が大きくドラマに出てきたインジャン・ジョーという残忍な悪者に顔がそっくりだった。気配を感じて振り向くと、いつも道路の向こう側に立っていて、こちらを見ているのだ。見ているというより、見据えているようだ。

その人が着ている大きなベージュのコートがチラリと視界に入ると、もう下を向いて小走りに家に帰るのが精一杯。そんな毎日が続いていたある日の夕刻、バスを待っていると、その人がバス停に向かって歩いて来るのが見えてしまった。

まずいっ!と思った次の瞬間、バチッとまともに目が合ってしまったまま・・・その人が横断歩道を渡ってくる・・・ドックンドックンドックン・・・私に逃げ場はない・・・ドックンドックンドックン・・・だんだん近づいてくるその人から目をそらすことすらできず、私は凍り付いていた。目を開けたまま気絶していたかもしれない。

そしてついにその人は私の目の前までやってきて、そして・・・こう言った。

   ・・・続く。      (゚○゚)ノノ


 

いや、続かない。  ミ(ノ_ _)ノ=3 ドテッ!!

その人の名誉のためにその言葉はヒミツするよ。ようするに真摯な態度だったんだ。でも、半解凍状態の私はヘンテコなことを言ってしまったに違いない。とにかくその人の申し出を断って、バスに飛び乗り、前の方の席に座った挙げ句、見えない相手の後ろからの視線に耐えきれなくなり、用もない停留所で飛び降りてしまった。それ以来、その人に会うことはなかった。大学院生だということだったから、おそらく卒業したのだろう。

彼はずっと気になっていた女性に卒業間際思いきって正面から交際を申し込んだのだ。見据えていたんじゃないんだ、見つめていたんだ。なのに若くて未熟だった私は彼の顔がインジャン・ジョーに似ているだけで酷い誤解を・・・。

あの当時の自分を振り返ると痛くてね。こんな分かってないオンナ、辞めなさい!とあのときの彼に耳打ちしてあげたい思いだ。それでも彼の「気持ち」は後にホンワカジンワリと私に反省を促し、あの日の出来事は、表面的なことにとらわれ人の本当の素晴らしさに気づこうとしなかった愚かな私への教訓となって心の中に刻み込まれている。彼が本当に素晴らしい人だったかは、今となっては確かめようもないけどね、・・・きっと彼を傷つけたと思う。うえぇ〜ん。

いまだに未熟だが、もう若くはない私は、あのときより相当マシな判断が出来そうなもんだと思うのだけれど、自分はどうよ?と思ったとたん、自分が人を選べるみたいな気持ちになるなんておこがましい・・・と思ってしまう。若いオンナの子たちが相手にばかり条件をつけ判断しているところ見ると、あの頃の自分を突きつけられているようで恥ずかしい。

あの人は一体どこで何をしているのかな。

                あぁ、・・・・キャタピラを1片見ただけで・・・。

                                      おわり。

 

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